|
他人のことはどうでも良かった。
醜い“人”のことなんて嫌いだった。
純粋なものが傍にあるだけで良かった。...醜い“人”も、死ねば等しく浄化される。
自分の手の中に、皆の命が、魂が預けられている
Episode -84
my walking
“ 僕の歩み ”
「 僕が、世界を造る 」
エルヴィスのその一言で、全員が顔を上げる。
美月だけは静かに目を閉じた。
「核へはどうやって行くの?」
「お前が願えばここから行ける」
いつもの調子でエルヴィスは喋っていた。
リーラルが誰よりも苦渋の表情を浮かべていた。
エルヴィスの決めたことに異論など唱えれなかった。誰も、何も。
「いつ頃行けばいい?」
「既に最終日に入ったからな・・・・・・ギリギリまで待つと核への通り道が無くなる」
「なら今の方がいいんだろうね」
エルヴィスの声は揺らがない。
大変な偉業をこなすというのに、不安も恐怖もないというのだろうか。
むしろ、安心して微笑んでいるようにも見える。
エルヴィスの目が全員を見回した。そして花の中心に行き、立つ。
「・・・・・・じゃあ、」
「待ってくれ」
最後に何かを言おうとしたエルヴィスをリーラルが止めた。
「女、私もエルヴィスと共に行くことはできないのか?」
その台詞にエルヴィスが目を見開く。美月はリーラルの目を冷静に見つめ返す。
「私のカバルとしての役目はエルヴィスを核へと連れて行く、だった。私が行っても支障がないのなら・・・・・・」
「確かにお前が行っても世界には問題はない」
「......私、には?」
美月とリーラルが見つめ合う。
世界の中央に立つエルヴィスが、リーラルの名を呟く。
聞こえないように呟いたつもりだったが、リーラルの顔がエルヴィスを向いた。
「お前自身のことは保障できない。どうなるか分からない。朽龍にとって、お前はただのイケニエだからな」
「私自身のみになら、それで良い」
満足そうにそう言うと、エルヴィスの傍に近付いた。
目を丸めたままエルヴィスがリーラルを見つめ上げる。
「私も共に。御前を独りにはしない」
初めて、エルヴィスの瞳が揺れた。リーラルはエルヴィスの手を取り、指を絡めた。
「私が必ず、傍にいる」
――――――俺の、全てを包んでくれた君に、
ぽた、とエルヴィスの目から何かが零れた。
世界になるのは怖くない。怖いのは独りになること。
君と 離れること。
君のいた世界を造るためなら、何も怖くは無かったんだ。
そしてできることなら、僕の世界に生まれて―――――・・・・・・、
傍にいてくれると言われれば、突き放せない
否定しないエルヴィスを見て、リーラルは微笑み、美月を振り返る。
「そういうことだ」
「お前が決めたことを止めはしない」
美月がそう言い、リーラルは頷いた。
視線をエルヴィスに戻し、自分はいつでも準備はできている、と目配せする。
「少し、待って リーラル」
エルヴィスは涙を拭って言い、俯いて何も言えず、黙ったままだったニルロットを見た。
「 ハイエナ 」
呼ばれたニルロットが顔を上げる。複雑な表情。
エルヴィスが招くように手を伸ばした。ゆっくりと、枯れた花の間をぬってニルロットは近付き、手を伸ばしてその手を取った。
手を合わせるとエルヴィスは目を閉じ、何かに集中する。
「広くて青い水たまり、これは何?」
脳裏にある情景を、エルヴィスが見ている。手に触れるだけで。
やはり彼には人の心や思考を感じ取る力があった。それは世界の半身、核である最もな理由だ。
世界は自らの懐にいる全ての人達を掌握している。それに似た力がエルヴィスにもある。
「それは、 海だ」
「うみ、 うみの上に陸が見える。家がある」
「島だ。人々が暮らす場所」
「しま・・・・・・」
呟くと、エルヴィスは手を離した。
「世界を造るイメージ、自然がいっぱいの世界にしたい。うみも欲しいな」
「できるさ、エルヴィスなら」
ふわ、とまだ咲くグラジオラスの花が光り、輝き出す。
ニルロットは一歩離れ、笑顔を作ってみせた。
エルヴィスの口が動いて何か言ったが、光の交差する音で上手く聞こえなかった。
エルヴィスとリーラルは手をしっかりと繋いだまま、光に包まれ、花が散るように消えた。