His neck is got.





His neck is got.




彼に愛人が沢山いるって事は知ってる、美人な殺し屋から屋敷のお嬢様、はたまた年くったマダムまで様々だ。
でも、あれ、俺は目が悪くなったのだろうか。信じられない光景が目の前に。
黒いスーツの中の白いワイシャツからちらりと覗く彼の首筋。俺も決して許されはしなかったのに。
信じられない。彼と対等に渡り合える愛人がいたとでもいうのだろうか。
「ちょ、リボーン!」
「……何だ、うるせえな」
新聞から目を離さないまま彼は言う。
あまりにも驚いたので大声をあげてしまった。それほど凄いことだった。
(この前もちょっと傷が水にしみてしまって大声をあげちゃって彼に叱られたばかりだったのだけれど)
彼の首筋に見える赤いあと。何かの傷かなと思ったけれど彼は決してそんなヘマはしない。
だとしたら全くもう完全にあれとしか考えられないのだ。そうあれ。キスマーク。
聞いてしまいたいけれど、欲求不満と嘲笑されてしまいそうだし言いづらい。
しかし叫んでしまった手前、何か喚かねばおかしく思われるだろう。
「……そのスーツいいね。新しいの?」
「前から持ってる」
「……そう」
知ってるよそれ確かボンゴレ十代目にプレゼントしてもらった一番のお気に入りだろ。
我ながら下手すぎる嘘。彼も気付いたに違いない。
でもとりあえずこの場はやり過ごせたし、彼も変わらず新聞に没頭しているし。
冷静になって考えてみるか。俺が知ってる彼の愛人は確か十一人程度だったかな。
その中の誰もが彼にベタぼれで、全くリボーン教かお前達はって感じの子猫ちゃんばかりだ。なんのカルト教団だよ。
そんな彼女等が彼の首筋にキスマークをつけるなど、恐れ多くて出来ないだろう。
若しくは命を引き換えに彼の首筋に痕を……ってやっぱりそれは無し。有り得ない。
女を抱いている時は流石に殴ったりはしないだろうけど、あの冷ややかな瞳はそのままだろう。
そんな彼に、キスマークなんて。俺はそんな恐ろしいこと考えもしなかった。
自ら銃弾に当りに行くようなものだ。人間としてやってはいけない。
愛人じゃないなら、どこぞの誰かに強姦されたとか。……冗談だよ。
「……何をそんなに見てるんだ」
どこからともなく聞こえてきた低い声でハッとした。どうやら俺は彼をぼんやりと見ながら色々と考えていたらしい。
その名もガン見。恐れ多い行為だ。
ああ、さっきの下手な嘘でも利用するか。通用はしないだろうけど誤魔化すのには最適だ。
「そのスーツに見とれてね」
「……ほー」
「それ凄く気に入ってるんだろ。手入れの仕方が尋常じゃない」
「俺がしたんじゃねえぞ」
クリーニングに出したってことですか。素直じゃないね。
俺の真意が読めたのか、彼は新聞から目を話しジロリと睨んできた。
怖いよ。
「……何か言いたい事があるみてえだな」
「いや、別に」
「嘘は効かないぞ」
もう彼に全て悟られているかもしれない。いや彼のことだ。きっと全て悟っていることだろう。
そうならば強がらず聞いてしまった方がスッキリすると思わない?そう思うよ。
「……その首の」
「ああ」
「赤いの、どうしたんだ?」
「何だ、妬いてるのか」
「冗談」
「……食われたんだよ」
「誰に!」
彼は楽しそうに笑ってみせた。まるで俺をからかっているようだ。
いや彼のことだ。きっとからかっているんだろう。そして単純な俺はうまく乗る。
彼はもっと楽しそうに笑った。
「金髪で蒼い目の美人だ」
「……ふうん」
思いのほか返事が普通でびっくりした。新しい愛人かな。
キスマークを許すなんて、相当彼が気に入ってるという証拠だろう。
どんな人だろう。イタリア人かな。きっと度胸の据わった子猫ちゃんだろう。
「そんなに気にかかるんなら今度会いに行くか?」
「いいって行かなくて!というか気にかかってないからな!」
「ま、そうだな。お前、前に会ったことあるしな」
「……前に?」
おかしなことが聞こえた。
俺がそんな命知らずに会っている?
俺が美人を忘れるなんて。
首筋が赤いまま、彼はパニック状態の俺を見てさらに楽しそうに笑い、再び新聞に目を落とした。









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