・・・よりによって、3人の女子が森の奥で言い争いをしていた。彼女らのもとに一番早く行きついたローダ教授が止めに入る。

「何をしているんだ、こんな危険なところで!」

いきなりの教授の声に、3人の女子生徒は驚いて声の発生源を振り返った。目を爛々と光らせた教授と、その後ろに生徒が7〜8人。さぞびっくりしたに違いない。今頃ここを通っているのだから。親しい友人がその中にいて、私は驚いて教授の後ろから声をかけた。

「リア、こんなところで・・・何を?」

私が呼んだそのコ――短く切ったブロンドに、蒼い両眼、動きやすい服――リアは、私の姿を確認すると一気にまくし立てた。

「・・・っ、聞いてよ、ミーナ!アイツったら、あたしは悪くないのに」

そこに突っ込んできたのは、ブラウンの長い髪を後ろでポニーテールにしているもう一人だった。短いスカートを穿いている。

「何よ、あんたが一番悪いんじゃない!たいしたことないくせに出しゃばって――」

「うるっさいな、黙ってろ!」

普段男っぽいリアが、ますます男に見えたのはこれが初めてではない。そんな光景を見て、最後のウェーブのかかった長い銀髪の一人が仲裁役を買って出る。

「もう、そんなくだらないことで言い争ってないで、早くアカデミーに戻るべきですわ!何よりここ危険ですし早く立ち去っ――」

「他人のことにちょっかい出してんじゃねえよ!このブス!」

リアが、思わぬ邪魔にどっかんと来た。教授は今まで呆然と阿呆なやりとりを見ていたが、はっと我に返ってとめようとした。

「やめなさい!これ以上やって何になる!アカデミーに帰ってからやれ!」

が、銀髪ウェーブが切れた。

「・・・ブス?わたくしのどこがブスに見えるのよ!よーくご覧になって!あなたたちより10パーセント以上体脂肪率は低いですわ!」

「何だって・・・?」

リアがすかさず反応する。ブラウン髪がそれに口を出した。

「あんたは痩せすぎなのよ。今みたいな平らなカラダじゃあ、男の一人も振り向いてくれないわよ。ふん、まあせいぜい頑張ることね」

その一言が功を奏したのか、銀髪ウェーブは思いっきり叫んだ。

「――っ、このわたくしを侮辱するなんて!もうこんなのいやですわ!」

そして、あろうことか叫んだ体勢そのままで、勢いで森の奥深くへと走り去っていった。リアが何を勘違いしたのか、相手が逃げていった方向へ一言こう叫んで後を追っていった。

「ちょっと、逃げてんじゃねえよ!待ちな!」

「あっ、待ってリア!行っちゃだめ!」

私の制止も聞かず、2人は見る見る遠ざかっていった。後に残ったブラウン髪は、2人の去っていった方向をしばらく睨みつけていたが、やがて、

「・・・もうやってられないわ。帰る!」

「あっ、こらっ!待ちなさい・・・」

教授の静止も聞かず、ブラウン髪はアカデミーに向かって小道を駆けていった。

後に残った教授は、深刻な表情をしてぼりぼりと頭を掻いた。

「あのままでは危ない・・・何とかしないと」

「あの、先生・・・私、3人を探すの手伝います」

私は、リアのこともあったので教授にそう言った。すると、

「あ、じゃあ俺も・・・」

「あたしも手伝うよ、ミーナ」

ルイとエルが賛同してくれた。それに続いて、他の何人かもちらほら発言し始める。何かといって心配だし。

「・・・じゃあ、僕も」

「行ったほうがいいんかなあ・・・やっぱなあ、心配やしね」

ローダ教授は、ぽんと手のひらをこぶしで叩いてからこう言った。

「じゃあ、こうしよう。ここには俺を含めて8人いるから、4組に分かれて、1人でも見つけてしっかり手でも繋いで逃げ出さないように・・・って言ったらおかしいけど」

教授は、ここでいったん言葉を切った。みんなの沈黙がその先を促す。

「とにかく、見つけて離れないようにしたら、魔法で大きな音を出してくれ。みんなに聞こえるようなでっかいのをな。それで、数えて3回聞こえたら、ここに集合。わかった?」

「わかりました」

「はい」

いい返事を聞いてから、教授はもう一回手を叩いた。

「よし、じゃあさっと組になってさっと探しに行ってくれ。俺は・・・うん、エル、君と組もうか」

ローダ教授の信頼しているという表情に、エルが答えた。

「はいっ、先生。早く探しに行きましょう」

私は・・・誰と組もうか。そんなことを考えていると、ルイに肩を叩かれた。目が合って、そして、一言真剣な表情で言われる。

「行くぞ」

「うん」

1回頷いて、私も真剣に返した。





数分後、私達2人は小道をはずれ、鬱蒼と茂った森の奥深くまで来ていた。

「とんでもないところに来ちまったな・・・本当にあいつらこんなところまで走って行ったか?」

「さあ・・・」

と、向こうの方になんだか開けたような土地があることに気づいた。何かが・・・いる。彼が私に言う。

「・・・おい、あそこ怪しいぞ。行ってみるか」

「オーケー、何かいるかもしれないから、そおっとね」

私は声を潜めてそう返してから、さらに目を凝らした。ん?なんだか血の臭いがする。その時、隣でルイが息を呑んだ。見ると、目を見張って開けた場所を凝視している。表情からは恐怖のようなものが読み取れる。

「・・・3人のうち1人だ。あそこにいる・・・でかいドラゴンに丸呑みされてる」

「まっ・・・るのみ?何で?」

「・・・残骸がないからさ」

私は、声を潜めていなければならないことを一瞬で忘れてこう叫んでいた。叫んでいる途中でルイが制するのも気づかずに。

「そ、そんな!早く・・・消化される前に・・・たっ、助けなきゃ!え?」

「後ろ!お前・・・っ、馬鹿か!早く構えろっ!」

彼の言葉が聞こえたのは、私が叫び終わってから後だった。同時に、ドラゴンがすぐ後ろで咆哮を上げたのも聞こえた。後ろを向いた私の目に、ぷっくり膨れたドラゴンの腹が飛び込んできた。

「いっ・・・」

・・・もはや私を制したはずの彼の目には恐怖が映っていた。

「・・・だから言っただろ!逃げるぞ、早――」

「ルイ、助けなきゃ、早く!アカデミー生がこんなところで食われて死ぬなんて満更でもないわよ!」

「お、俺達だけで勝てるわけない!被害が3人になる!」

私は、オタオタしている彼に向かって言ってやった。ドラゴンの首が近づいてくる。

「あんたは何のために魔法を学んできたのよ・・・何のために今日の実習があったのよ!」

ルイは私の言葉にはっとした表情になった。言葉が返せないのだろう。

「えっ・・・ぁ」

「ごたごたやってないでいくよ!」

「・・・っ、おい!くそ、しょうがねえ!」

私は、ギャーッと叫んだドラゴンの片目めがけて、普段護身用に腰につけていたナイフを投げつけた。







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